「いま」の自分たちを、輝かせ続ける:Perfume──WIRED Innovation Award 2025 受賞者インタビュー
NEWS | 06 December 2025
あ〜ちゃん 緊張して震えるのを通り越して、全身が冷たくなって洪水のように涙が出る。ギリギリだな、と思う場面は本当にたくさんありました。でも、それに打ち勝ったときにしか得られない何かがあって、そういう体験をずっと3人で共有してきたと思うんですよね。 挑戦し続けることで常に向上し続けることを自分たちのスタイルとして極めてきたし、だからこそいまの自分たちがいちばん輝いてるって自信をもって言える。その積み重ねなので、大きな役割を意識するというよりも、毎回やることに必死で。 それは、情熱と時間をかけてくれる周囲の人たちの愛だったり、「Perfumeがこうなったらマジでかっこいい!」という思いをずっと感じてきたから。絶対に成功させたいという思いが毎回強すぎて、“Perfumeの役割”のようなものは後からついてきたものというか。やらせてもらえるのが本当にありがたい、という感情のほうが常に大きかったですね。 魂が震えた瞬間 ──苦悩や苦労をすべて帳消しにするほどの幸福な瞬間も、数多く経験してきたと思います。そんな「魂が震えた瞬間」を教えてください。 かしゆか 選べないくらい、いっぱいあるな……。でも「魂が震えたときに自分はこうなるんだ」とすごく感じたのは、2022年の「PLASMA」ツアーでの宮城公演です。 コロナ禍から徐々に社会が戻ろうとしていて、このツアーからお客さんをフルに入れていい状況でした。でもフルに入れると声は出せない。そんななか、この公演だけ動員が50%に満たなかったので、その状況を逆手にとって、お客さんの間隔を開けて声を出せるようにしたんです。 すると、お客さんたちの気迫と思いで空間が埋められていくのを、ものすごく感じたんですよね。「Perfumeを寂しくさせないぞ」って。みんなが望むだけの人数がいなくても、それでもみんなとその日を大切にできた。お客さんとの信頼関係や、なにが大事かを再確認できた瞬間だったし、不甲斐ない気持ちとうれしさが混じって、いまでも忘れられないです。 ──やはりPerfumeにとっても、パンデミックはすごく大きな出来事だったんですね。 あ〜ちゃん そうですね。2020年2月26日に東京ドーム公演2日目が中止になって、そのあと用意していたことがすべてできなくなった。業界的にもライブができない状況が続きました。そんななかで、ぴあアリーナMMを借りられることになって、ライブ「polygon wave」(2021年9月)は震えました。 「システムリブート」から始まり「再生」を歌ったんですけど、あまりにも以前とは違う光景に驚いたんです。声を出せないし、マスクで表情はうまく見えない。最初はなんともいえない内向きの緊張があって、お客さんとの間に距離も感じました。 あのライブは、お客さんが声を出せる曲をなくして、体を動かせる構成にしたんですよ。「わたしたちは、もう新しい時代にいる。いまを楽しめることをやっていこう!」って。それをお客さんたちが徐々に理解してくれてるのが伝わってきて、ものすごい気迫に変わっていったんです。 最終的に、当時未発表の「マワルカガミ」も歌わせてもらったんですけど、終幕後も拍手が鳴りやまなくて。声を出せないぶん、動きでなんとかわたしたちにレスポンスしてくれた。その降り注ぐようなエナジーに本当に震えました。まだまだ歌いたい、踊りたい、みんなと一緒にいたいって。
Author: Takuya Wada.
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