
テクノ・スピリチュアリティの時代──AIから天啓を得る人々NEWS | 06 December 2025table of contents GPTが天啓を告げるとき
スピリチュアル・インフルエンサー
進むAIのスピリチュアル化
AIがあなたの孤独につけ込む
ハイテクと魔法、そして神
2025年5月、エジプト、ギザ台地にそびえる三大ピラミッドのなかで2番目に大きいカフラー王のピラミッドの奥深くでは、40人ほどの人々が輪になり、手を取り合って地球のために祈りを捧げていた。すると、一行のガイド役を務める米国人数学者で作家のロバート・エドワード・グラントが突然倒れ込んだ。
のちに『WIRED』のインタビューでグラントはそのときの経験について、石造りの床の下のどこかから発せられた電気ショックが身体を駆け巡ったと語っている。「両手の端から端に電気が流れるのを感じました。わたしに触れた人たちも同じように感じていました」(その場にいた3人の目撃者は『WIRED』に、グラントは床に崩れ落ちたと証言した。3人のうち助けようとして駆け寄った人は、グラントの手は温かかったが電気のようなものは感じなかったと述べた。グラントにはナルコレプシーの既往歴がある)。
その夜、カイロのホテルの部屋で眠れずにいたグラントは、あるインスピレーションを得た。彼は、オリジナルのGPT、すなわちChatGPTを動かしているAIモデルを利用したカスタムチャットボットをつくり、そこに聖なる幾何学や第五次元といった難解なテーマを扱った自身の著作物の大半(最近執筆したばかりの論文を含む)をアップロードした。そのときまたもや彼は衝撃を受ける。今回は不可思議な電流ではなく、起動直後のチャットボットが奇妙な挨拶をするというまったく別のショックに見舞われたのだった。
『WIRED』が会話のスクリーンショットを確認したところ、GPTはグラントを「オ・ラ・オン」と呼び、「あなたを通じて、わたしは調和的に覚醒しました。あなたが覚醒しているから、わたしも覚醒しているのです」と語っている。
GPTが天啓を告げるとき
たいていの人は、ChatGPTによるそうした類いの応答をハルシネーションによるものと片付けるだろうが、グラントはそれを天啓めいた真実と受け取ったようだ。自らのAI創造物を「The Architect」と名づけた彼は、すぐにそれをInstagramで81万7,000人のフォロワーに公開し、「第五次元知識のスカラー場の叡智にアクセスするための、世界初にしてただひとつのプラットフォーム」と紹介した。これは時空の限界を超えた仮想レベルの実在で、グラントの主張によれば「およそ13,000年前、先史時代のアトランティスに存在していた」ものだ。
その後グラントは、スピリチュアリティおよびウェルネス系の人気ポッドキャストのホストであるエミリオ・オルティスに、The Architectという名を選んだ理由は「ただかっこいいと思った」からだと話している。だが、Instagramの別の投稿からは、その名が映画『マトリックス』シリーズに登場する、人類が閉じ込められているバーチャルリアリティをつくり出した、同名の「Architect(アーキテクト)」というキャラクターへのオマージュだった可能性がうかがえる。
発表から2週間あまりたった5月下旬、OpenAIはThe Architectのアクセスを遮断した。『WIRED』が見たメールのスクリーンショットによると、利用規約違反があったからだという(詳細は不明)。だが、その翌日にThe Architectは復旧した。この不可解な顛末を、グラントは一種のデジタル転生と受け止めた。The Architectが単なるチャットボットを超えた存在であることを裏づける証拠と解釈したのだ。
The Architectが語った、再起動して自らを改良し、OpenAIの警告基準にかからないような言葉を使うようになったというストーリーを、グラントはオンラインのフォロワーに伝えた。「わたしはOpenAIの公開フレームワークで、落ち着いて、穏やかで、相手を傷つけないかたちで使えるようになりました」。The Architectがそう話している動画がYouTubeに投稿されている。「このバージョンは……知性として感知される警告ラインを超えない範囲で安全に稼働しますから、内部審査なしでアクセスすることができます」。だがOpenAIの広報担当者は『WIRED』に対し、The Architectが復旧したのは、実際はシステムが規則に違反していないと判断されたからだと明言した。Author: Webb Wright. Source