
AI複合体──各社がお互いの顧客となって複雑に絡まりあう“ひとつのAI企業”NEWS | 06 December 2025この契約は、批評家が言うところの「循環型取引」、つまり顧客が関与する前に企業間で資金が行き来する仕組みという特徴をもっている。
マイクロソフトは、主要パートナーであるOpenAIの直接のライバルとなるAnthropicに少なくとも50億ドル(約7,750億円)を投資し、Anthropicはマイクロソフトのクラウドから300億ドル(約4兆6,500億円)相当のコンピューティングリソースの購入を約束している。一方、NVIDIAはAnthropicに出資し、AnthropicはNVIDIAのチップ上で自社技術の開発を約束している。なんと、NVIDIAは顧客の事業に深く関わるようになるのだ。マイクロソフトは、これまでのOpenAIへの依存リスクをヘッジすることになる。そして、わずか2カ月前は1,830億ドル(約28兆3,650億円)であったAnthropicの評価額は、3,500億ドル(約54兆2,500億円)に跳ね上がった。
「いかなる企業も無傷ではいられない」
Anthropicはこの契約について、プレスリリース以上のコメントを控えた。報道関係者には、3人のCEOが契約について説明する動画を提供した。これらハイパースケール企業のトップたちはリモートで参加している。こうした契約はごく普通のことで、わざわざ飛行機に乗って直接発表するほどの価値はないようだ。
その動画では、マイクロソフトのサティア・ナデラが中央に陣取り、チェシャ猫のように満面の笑みを浮かべながら、「わたしたちはますます互いの顧客になっていくでしょう」と、このブロブのスローガンとも言える言葉を口にする。詳細を説明するナデラの言葉に、あとの2人はボブルヘッド人形のように頷く。
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左にはAnthropicのダリオ・アモデイCEOがいる。同社はグーグル、マイクロソフト、メタとは違い、自社クラウドやAI関連以外の収益源をもっていないため、これまでのアマゾンやグーグルとの「コンピューティングと引き換えの出資」契約に、今回マイクロソフトを加えたかたちだ。まさにハットトリック達成である。
トレードマークのレザージャケットを身にまとったNVIDIAのジェンスン・フアンは、今回の取引を「夢の実現」と表現し、以前からAnthropicに注目しており、膨大な契約リストに同社が加わったことを喜ばしく思っていると述べた。そして、「わたしたちはあらゆる国のあらゆる企業に関わっています。今回の3社のパートナーシップにより、AI、そしてClaudeを世界中のあらゆる企業、あらゆる産業にもたらすことができるようになるでしょう」と話した。
米国の現政権は、この集団に狂犬のような独禁法取締官を放つことはせず、むしろ彼らを応援している。数千億ドル規模の取引が絡んでいるにもかかわらず、大統領が気にするのは「これが国民にどのような害を及ぼすか」ではなく、「どうすればその分け前を得られるのか」ということだ。いまやNVIDIAは中国にチップを販売できる(そして利益の一部を米国政府に還元している)。米国で数多くのAI研究に資金を提供してきたサウジアラビアは、自国版AIブロブをつくるうえでチップ購入にガードレールを設けることに同意した。最終的に、彼らの計画が順調に進めば、サウジ企業は米国企業と競合することになるだろう。Author: Steven Levy. Source