AI開発競争、オープンモデルは中国が優位に。米国が主導権を取り戻すために必要なもの
NEWS | 06 December 2025
2022年以降、米国はOpenAI、グーグルDeepMind、Anthropic、xAIといった急成長企業が開発する高度なモデルのおかげで、人工知能(AI)分野を牽引する立場を築いてきた。しかし、ダウンロードして用途に合わせて調整し、ローカル環境で利用できる「オープンウェイト」型のAIモデルの開発については、米国が後れ始めているのではないかと懸念する専門家が増えている。 Kimi、Z.ai、Alibaba、DeepSeekといった中国企業が提供するオープンモデルは、世界中の研究者や開発者の間で急速に支持を広げている。その結果、AIのイノベーションにおいてますます重要性の増す領域で米国は後れをとり始めている。「米国がAIスタックを構成するあらゆる領域で優位な立場を固めるには、オープンモデルが不可欠です」と、ATOM(American Truly Open Models)プロジェクトの創設者ネイサン・ランバートは『WIRED』に語る。 米国企業が提供する最先端モデルは、チャットボットのインターフェイスを通じてか、あるいはAPI経由で各社のサーバーに問い合わせる方法でしか利用できない。OpenAIとグーグルもオープンウェイトモデルを公開しているものの、中国企業が提供するモデルと比べると性能は大きく劣る。中国側のモデルは目的に合わせて改変しやすく、開発者向けの支援も手厚いのだ。さらに、中国のモデル開発企業は、自社モデルをオープンソース化することの恩恵を受けている。外部研究者による改良点や最良のアイデアを、将来のバージョンにとり込むことができるからだ。 オープン性の後退がもたらすリスク ワシントン州シアトルの非営利団体アレン人工知能研究所(AI2)の研究者でもあるランバートは、米国がオープンソース分野で後れを取ることによるリスクを明らかにするために「ATOMプロジェクト」を立ち上げた。最先端のオープンモデルが必要とされる理由のひとつは、海外モデルに依存している場合、それらが突然提供を停止したりクローズド化されたりすると問題が生じかねないからだと、ランバートは指摘する。 また、オープンモデルはスタートアップ企業と研究者によるイノベーションや実験的な試みを促す役割も果たすとランバートは語る。さらに、機密性の高い情報を扱う企業には、自社のハードウェア上で動かせるオープンモデルが欠かせない。「オープンモデルはAI研究や普及、そしてイノベーションを支える重要な要素であり、米国はほかの関係者の後を追うのではなく、主導的な立場でかかわるべきです」とランバートは話す。 7月4日に始動したATOMプロジェクトは、より大きなオープン性の必要性を明確に示すとともに、近年中国のオープンウェイトモデルが米国勢を上回るようになっている状況も明らかにしている。 米中で開いた差 皮肉なことに、オープンソースAIの流れを最初につくったのは、米国のソーシャルメディア大手メタ・プラットフォームズであった。同社は2023年7月、「Llama」という最先端のオープンウェイトモデルを公開したのだ。当時メタは、LlamaをAI競争に参入するための手段と捉えていた。そして公開後まもなく、研究者や起業家の間で広く利用されるようになった。
Author: Will Knight.
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